タルン通信その9

今晩は!

日本は全国的に3連休ですってね!
温泉? 紅葉狩り? それとも安近短でちめんかのや でしょうか??
現在ギャラリーでは、僕の好きな藤村さんのモダーンアートやっています(やってるはず)ので、きっと楽しめると思います!

さて お待ちかね 後編のはじまりです。

帰りは、別行動にして 僕はポーター1人を引き連れて、早々に帰路につきました。
他の二人は、さらに北に足を延ばして 次回登る 未踏峰の視察に行きました。
ご苦労なことです!
僕はこの2ヶ月間 ちめんかのや を切り盛りしてくれている人たちのことが頭にあるので早く帰国することにしました。

(生物が棲息できる大地へ)

ヤルン氷河を3時間下ると 枯れてるような茶色の下草がでてきます。さらに下ると その色が徐々に生き生きとした緑色に変わってきます。
そのうち 花がついてるところを見つけると 今までとは別世界で とっても嬉しくなってきます。あー生物が生きている場所に戻れたんだー 感動しました。
1ヶ月近く岩と雪しかない無機質で不毛な大地に居たわけですから・・・
考えてみれば、色はすべてモノトーンだったわけでしょう!

そして しゃくなげの低木があらわれ、そして 木。
虫が群れて飛んでいる 新鮮な驚き そして安堵感。
森の中を歩くって なんて素敵なんだ! これはほんとに歓びでした。

(孫悟空が通る道)

その翌日は、別ルートに向かうため 三つの峠越えをしました。 
4500mくらいの山々を 歩きました。
すでに遠くに見えるタルン峰や、ジャヌー峰の裏側など見えて、スイス か カナディアンロッキー かという壮大なパノラマが広がります。もう見るだけで 登らなくてもいい !
という開放感が ほんとに 生きててよかった という気持ちにさせてくれるのでしょうか?
GHUNSA へ近づいたころ 桃源郷のような場所があったのです。
山の竜宮城です! 緑豊かな高原に 清らかな小川が流れ それが天に向かってまばゆいばかりに光ってるのです。
なぜか 孫悟空を従えた 三蔵法師のような気分になってしまいました。

(グンサにて)

2日目の夜は、グンサという50軒ほど家のあるこのルートで最大の村でした。
同行の19歳のポーター ダンドゥ君の 生まれ故郷はグンサで親類や知人がたくさんいるのです。宿泊したロッジも親類がやっている所でした。
ダンドゥ君から自分の叔父と兄弟にならないかとの申し出があり、せっかくだから OKすると早速その晩、兄弟の契りの儀式がありました。

当事者2人がひな壇に並び、三々九度よろしく 地酒を酌み交わし、プレゼント交換です。
なんでもいいというから手袋と帽子を用意していたら、な なんと先方は チベタンラグ(カーペット)を持ってきてます! 
釣り合いを保つために大事にしていた赤いダウンジャケットを貢物にせざるを得ませんでした。
あーあ これからも寒い日があるのに・・・
それにその日の午前中に ダンドゥ君の祖母が織ったというチベタンラグを購入することに決めたばかりだったのです。
こんな重いの2枚も誰が運ぶの???

プレゼント交換の儀式が終わると、ダンス・ダンス・ダンス 飲めや踊れのお祭り騒ぎが夜が更けるまで 続きました。
グンサのカルチャーとのことですが、久しぶりに 大騒ぎで愉快な夜ではありましたよ!

翌日の山歩きから 13歳のまだあどけない ダワ君という少年がチベタンラグを背負って、僕らについて来ることになりました。多分ダンドゥ君が下請けとして、雇ったのでしょう!

(山岳民族シェルパ族の暮らし)

それから、数日間 山間部を渡り歩き、夜は シェルパ族のロッジか家に泊まらせてもらいました。
シェルパの生活は シンプルライフを地でいくものです。
電気がない だから 冷蔵庫・洗濯機・テレビ・ETC がない。パソコンがない。
ガス台もない、電話もない.あるのは 僕がザックに入れてるものとそう変わらないもの(食器とか寝具とか)だけでしょう!
だから部屋の中はスッキリしてますよ。夜には かまどに くべた まきが燃える 灯りしかない だから本も読まない。 できることは 地酒飲んだり おしゃべりすることぐらいかナ。
床は土でできた土間 そこに土で作った かまどが一つありそこが部屋の中心的な場になります.壁は土壁で ちめんかのやの色。
その壁に小さなアラジンのランプみたいなのが 1個か2個あって灯がついている。
幻想的な雰囲気で とても美しい。

食事も米の主食に 芋と豆を中心とした ダルバート(薄口カレー)がおかずで、いうなれば 健康食。僕なんて BC下ってから 8日間連続で 夕飯はダルバート、朝飯はララというインスタントヌードゥル、昼飯はダルバートかララ...
僕にとっては インスタント・ラーメンは好物だし、ダルバートも旨かったので 問題なしでした。
都会育ちにしては サバイバル型 でしょう!

夕食前のひと時、家長と妻は かまどの横に陣取り その家でつくった地酒を 楽しみ (どこでも奥さんは呑んでいた)長女がその間 食事の準備をする。 出来上がった料理は土間の上に並べられ 家族(平均的に8−10人)が全員集合しいっせいに食事をする。
今の日本だったら、お姉さんは彼と外食、お兄さんは残業、弟は塾で帰っておらず、肝心のお父さんは会社の接待で深夜帰宅。
こんなかんじで夕食時 家族が一堂に会するなんてなかなかないのでは?...
貧しくても、足りないということを知らず、幸せに生活してるなって
強く思いました。

(動物との共存)

シェルパ族の家には たくさんの動物が 住んでいます。日本の田舎もそうでしょうが、さらにたくさん住みついています。
ニワトリ(+ひよこ)、家鴨、山羊、牛・ヤク、犬、豚、猫です。豚以外は放し飼いです。それなのに別種が 混ざり合って喧嘩もしません。
暗い室内で、開いた扉から、明るい外を眺めていると 山羊が覗き込んだり、ニワトリが室内に入ってきたり、でかい牛の首が にゅっと現れたりします。

人間の乳幼児も混ざって いっしょにヨチヨチやってます。余程悪さをしない限り みなほったらかしです。だからか、どの動物も みな 何のストレスもなく のびのび のんびりやってるかんじですね。
文字どうり共存です。
日本のペットとの関係についても 考えさせられました。

なを日本で20万円くらいする猫のヒマラヤンはインチキでした。
そんなの 1匹もいませんでした。
もっと毛足が短くて 鼠色した猫が ヒマラヤ猫でした。

(小型飛行機でカトゥマンドゥへ!)

今回のトレッキングの最終点の タプレジュンには 飛行場があります。
エアーポートではなくてエアーフィールドとなってるのは 野原の滑走路が 山の斜面にあるだけなのです。
着陸時は坂を登り、離陸時は坂を下って飛び立つ... カナダ製の小型機です。
可笑しかったのは パイロットが操縦室の天井をあけて、体を乗り出して、ぺットボトルの水を フロントグラスにかけて洗っていたこと。離陸時に乗務員が配ってくれた脱脂綿...
何するのかと思ったら、みな耳につめてました!

飛行機に乗ってしまえば、文明社会へひとっ飛び!
何しろ55日間にわたって クルマのエンジン音を耳にしなかった僕です。
9月4日にカトゥマンドゥにはいった時は文明社会から 素朴な田舎に来たように感じたのに
今回は すごい文明都市に 足を踏み入れたように思えました。

長いようで短い旅でした。.
きっと 欧米などの先進諸国を旅行したのでは出会えなかった さまざまなことが あったと思います。とてつもないハードなこともありましたし、僕にとって生涯忘れえぬ 旅だったにちがいありません。

長い間 タルン通信にお付き合いいただき ありがとうございました。

またちかく東京でお会いしましょう!

村田茂広

 

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